授業中にコンパス,定規だけを用いて角の三等分を作図することはできない,
というお話をした。きちんと証明するとなると結構大変なのだが,
それなりに解説されている本があるので紹介しておく。
矢野健太郎,角の三等分,ちくま学芸文庫,2006年
上にも書いたように, きちんと証明するのは大変。
厳密には「ガロア理論」という,方程式の理論(図形に関することなのに,
方程式の理論が用いられる! 理学部の3年生で習う)が必要である。
この本で矢野先生は,そこまで踏み込んでいないが,周辺のことを
いろいろとやさしく解説してくださっている。
ガロア理論については,沢山の本が書かれている。
その中から次の本を挙げておこう。
アルティン,ガロア理論入門,ちくま学芸文庫,2010年
普通ガロア理論は「代数学」と呼ばれる講義の中で,
「体論」という理論の一部として扱われる。
しかしこの本は,線形代数の知識だけを仮定し,
ガロアの理論を説明する。
薄いので,しっかり取り組めば,数学の本を読むいい練習にもなるだろう。
アルティンは整数論が専門。
上に紹介した「角の三等分」を書かれた矢野先生は,
微分幾何学が専門。
専門書もさることながら,素人向けの優しい解説書をたくさん書かれた。
図書館にも何冊かあるようだから,興味のある人は,検索して読んでみるといいだろう。
特に,「数学教育現代化」の頃,教師向けの本もたくさん書いておられる。
一方で,高校生向けの「モノグラフ」という,1冊1テーマというタイプの叢書も編集され,
私が高校の頃には大分お世話になった。
また「解法のテクニック」という受験参考書も書いておられ,
昭和時代(!)の受験生にもカリスマ的な存在であった。
今でも「解法のテクニック」という参考書はあるが,
執筆者はお弟子さんの茂木勇先生に変わっている。