授業中に触れた本の紹介をする。
ユークリッド,原論,共立出版,2011年,
聖書の次によく読まれた本,という異名をもつ。
昔の人が数学を勉強するとき,
まずはこの本で勉強したからである。
しかし日本語であってもかなり読みにくい。
戦前までの幾何学関係の教科書は,
大半(特に日本では)この原論を手本に,
書かれたものが多い。
しかし,特に1960年代に始まった「数学教育の現代化」にともなって,
多くの国の初等教育の現場から
(特に日本)ユークリッド幾何学はなくなってしまった。
それにかわるものとして,ベクトルや行列が入ってはきているが,
完全に置き換えられたわけでもない。中途半端な状態である。
デカルト,方法序説,岩波文庫,1997年,ちくま学芸文庫,2010年
「我思う,ゆえに我あり」の有名な文句で知られる。
彼はこの本の中で徹底的にすべてを疑い,
自分が「明晰判明」に正しい,と考えること以外をすべて除去していく。
で,徹底して除去していったときに,
「こうやって考えている自分,この存在は絶対に疑うことができない」
という結論に至る。
そこから,全てのものをユークリッド幾何学的に再構築していく。
2,3回後にお話する,「公理的構成」という手法は,
ユークリッドの「原論」において初めて現れ,
多くの学問の手本として使われるが,
デカルトは,それを哲学において成そうと務めたのである。
またそこに現れた「分析」と「綜合」という考え方は,
近代科学の基本的手法として使われている。
「方法序説」には6つの付録がある。
(上に紹介したいずれにも含まれていない)
その中の一つが「幾何学」で,
座標の考え方が導入され,「解析幾何学」が創始された。
「幾何学」の訳本も最近文庫で出版されたようだ。
近々手に入れて読んでみるつもり。