授業で紹介した本

シラバスにも書いたが,
微分積分学,線形代数学,解析幾何学についての知識は前提とする。
よって,それらに関する本は常に参照できるようにしておくこと。
それぞれの授業で購入した教科書で十分である。
しかし忘れていることも多いだろうから,思い出す,
あるいは改めて理解を深めるためにも,見る手間を惜しまないでほしい。

微分幾何学(曲線論,曲面論)についてはまずは教科書。
基本的にはこの1冊で,古典的なテーマについては十分である。

これ以外に挙げると,

小林昭七,曲線と曲面の微分幾何,裳華房,1995年
この本は本講義と同じくらいの内容程度であるが,
自習が可能な書き方がされている。
平面曲線に関することが結構詳しく書かれている。
特に平面曲線の大域的な性質の一つである
「四頂点定理」の解説がある。

安達忠次,微分幾何学概説,培風館,1976年
この本は本講義と同じタイプの教科書である。
しかし書き方は物理で使われる記号をかなり意識しているように感じられる。
最後の章は「リーマン幾何学」となっていて,
曲面論の一般化が扱われている。

スピヴァック,多変数の解析学,東京図書,2007年
タイトルは「解析学」となっているが,後半は多様体論。
物理学で使われる「ストークスの定理」を厳密に証明することを目標としている。
古典的な微分幾何学をバイパスして,現代的な微分幾何学への入門書とみることができる本。

洋書を2つほど挙げる。

O’Neill, B., Elementary Differential Geometry, Academic Press, revised 2nd ed., 2006,
2変数関数の微分法の復習から始まり,曲面論が展開される。
必要に応じて曲線論が論じられる。
(私の授業を含め)古典的な扱い方では座標を扱うので,
インデックスがなかりごちゃごちゃしているが,
O’Neil のこの本はベクトル記法を主としているので,
表現はすっきりしていてみやすいかもしれない。
また,そのため何が本質なのかも汲み取りやすいかもしれない。
一方で現代的な記号の扱い方に慣れていないものにとっては,
かえって読みにくいかもしれない。
最後の2章はリーマン幾何学と,曲面の大域的な構造が扱われていて,
さらに一般的な微分幾何学,リーマン幾何学につながるように書かれている。

do Carmo, M., Differential Geometry of Curves and Surfaces, Prentice-Hall, 1976
タイトルからわかるようにまさに「曲線と曲面の微分幾何」である。
小林先生のものと同じタイトルだが,こっちのほうがかなり詳しい。
扱い方も古典的な座標を主とした書き方を重視している。
この本も最後の章は大域的な話題を扱っている。

講義のテーマからは少し離れるが,発展的な内容,他の幾何学と関係のあるものを
紹介しておこう。

松島与三,多様体入門,裳華房,1965年
曲面の概念を一般化したものが「多様体」という幾何学的な対象物である。
現代的な幾何学は,
(微分幾何学に限らず)多様体にさらにある種の構造を付け加えたものを研究する。
松島先生はその中でも「リー群論」を専門としておられ,
最後の章はその分野への入門となっている。

シンガー, ソープ,トポロジーと幾何学入門,培風館,1976年
トポロジーは「位相」と訳される。
諸君らの中には来年度「位相幾何学」という講義を受講するものもいるだろう。
この本は,その位相から始まり,位相幾何学の中でも「代数的」位相幾何学の
基礎である基本群,ホモロジー群を解説し,さらに多様体,リーマン幾何学へと進む。
これらの概念が渾然一体となしていることが,見て取れる稀有な内容となっている。
二人の著者はトポロジーおよび微分幾何の専門家である。

大森英樹,力学的な微分幾何,日本評論社,2010年(新装版)
まえがきにあるようにこの本は「教科書ではない」。
またタイトルから察せられるように,物理学,特に力学との関連を強調した「副読本」である。
微積分はニュートンが彼の力学理論を記述するために発明された。
アインシュタインは一般相対性理論を記述するためにリーマン幾何学
(厳密にはリーマン幾何学のさらなる一般化である「ローレンツ幾何学」)を用いた。
さらに最近では微分幾何学のある分野は,
先端的な物理学と大きく関連することがわかってきている。
このように物理学と微分幾何学は切っても切れない関係にある。
数学それ自身だけでも十分楽しめるが,他分野との関連を知っておくだけでも,
楽しみが増えるし,話題も増えることだろう。
もちろん研究のネタを探すにもいい場所である。

この中のいくつかは絶版で,古本屋で探さないと手に入らないかもしれない。
しかし図書館にはあるので,まずはまえがきと目次くらい,
そして初めの数ページを眺めてみるといいだろう。

でも,学生時代に全部読もうなどとは思わないこと。
いずれの本も,きちんと読もうと思えば,最低1年はかかるだろうから。

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