岩田至康,幾何学大辞典,全6巻+別巻2,槇書店,1971年〜

現在絶版。
古書店やオークションなどにたまに出ることがあるが,
かなり高価に取引されているようです。


岩田先生が,このような辞典の編纂を決意した経緯は,
同辞典の第1巻「はじめに」に次のように書かれている。
(ブログの記事として読みやすいように,適宜改行を入れている)

数学辞典の草分けは,明治時代に出た長沢亀之助氏のものであろう。
われわれは特に代数・幾何・三角法の各辞典に親しんだことを思い出す。
これらの辞典はその後大正時代を経て
昭和の初め頃まで続いて刊行されたように思う。
つぎに出た幾何学辞典は,昭和12年初版の笹部貞市郎氏のものである。
この書は現在も公刊されて好評を博しているようである。
外国ではわが国ほどの大部のものは見当たらず,私の知る範囲では,

 J. M${}^{\mathrm{c}}$.Dowell, Exercises on Euclid and in Modern Geometry.
 F.G.-M., Exercices de Geometorie.

等の問題解答集のみである。

しかしこれらの辞典はどちらかというと啓蒙的な書であって,
学術的見地からみると幾分物足りなさを感じる。
わが国の現状としてはこれらの書では満足できず,
もっと学術的で文献を調べる上においても役立つような
幾何学辞典の出現が望まれる。
私は久しい以前からそのような辞典があれば,
幾何学研究者にとってどんなに役立つであろうかと思い,
ひとかにその出現を望んでいたのであるが,
ついに私の望みはかなえられなかった。

(中略)

しかし私も老年の域に達し,
もはやこれ以上待つことはできなくなった。
そこで意を決して,自分で及ばずながら少しでもよいから文献を追加し,
また整理して両博士の業績を後世に伝えたいと思うようになった。
(幾何学大辞典第1巻,「はじめに」,p.1–2)

長澤,笹部の両著にふれて,「啓蒙的な書」といい,
学術的でない,と不満を述べておられる。

確かにこれらの著には問題の出典が一切書かれていない。

出典のないものもどこかに初出があるはずなのだが,
一方でfolkloreと考えてもいいものもあるだろう。

あるいは,長澤,笹部の場合,
結構入試問題などに取材しているケースもあると思う。

未だ確かめていないが,長澤の場合
  「官立学校入学試験算術・代数・幾何・三角・分類問題集」
といった著作があるから,これは考慮あるいは調査したほうがいいだろう。

一方で,長澤はいろいろな本を訳しているし,
当時はたくさんの訳本が出ていたので,
それらに取材していることもあるかもしれない。
(それらしいものは一つ見つけている)

笹部も同様な感じがする。

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