早川書房はかなり昔,ポケットミステリのシリーズと同じ判型で
SFのシリーズを出版していた。
そのことは知っていたが,時期がずれていて
私自身はそれを読んだことがなかった。
しかしそのシリーズにはなぜか,ほのかな憧れがあった。
私が知った高校生の頃にはほとんどの作品が絶版となっていたようで,
本屋の棚で見かけたことはなかったと思う。
ポケットミステリのシリーズは何冊か読んだ。
しかし当時高校生であった私には,
文庫本は買えるくらいしかもらっていないお小遣いからは高価なシリーズだった。
社会人になって,それなりに小遣いに自由がきく頃には
今度はミステリへの興味が薄れてきた。
謎解きが面白くって本格ものばかりを読んでいたが,
特にミステリの初期の頃の作品,
クリスティやクイーンをある程度読み終え,
どちらもその傾向が変わってきたことが大きい。
一方でデクスターやジェイムズなどの現代の作家のものを読んでみて,
あまりにも複雑なストーリーに嫌気がさして,
軽い作風である作家の作品をよく読んだ。
日本の作家では都筑道夫を繰り返し読んでいたものの,
いつのころからか,ミステリはほとんど読まなくなった。
(都筑の「砂絵」のシリーズ,物部太郎のシリーズは何度読んだことだろう)
SFの方は,大学生の頃,先輩に勧められてアシモフの「銀河帝国」シリーズを読んだ。
その頃にはまだ初期の3部作だけしかなかった。
その後,続編が書かれ,翻訳が出版されるたびに買って読んではいた。
しかしそれ以外の作家の作品を読むことはほとんどなかった。
で,一昨年「新☆ハヤカワ・SF・シリーズ」が刊行されるということを知って,
今度は刊行の時系列にそって読んでみたいと思うようになった。
仕事とのかねあいで,ここしばらくはなかなか趣味の本を読む時間さえ取りにくいのだが,
2ヶ月に1冊刊行というペースも気に入った。
で,5001番「リヴァイアサン」を読み始めたのは12年の夏からだった。
「リヴァイアサン」はかなり読みやすかった。
「ブラックアウト」と「オール・クリア」は大変長く,
複雑なストーリイだったが,なんとかついていけた。
第2期の1冊目「白熱光」を読み始めたのは12月の半ばからだった。
SFといってもジャンルがかなり広いそうだ。
「白熱光」は,ハードSFと呼ばれる分野の作品だそうだ。
Wikipedia によると,ハードSFとは
「科学性の極めて強い,換言すれば科学的知見および科学的論理をテーマの主眼に置いたSF作品」。
「白熱光」はまさにそういったものだった。
途中数式はまったく出てこないが
「これ一般相対性理論じゃね?」
と思える記述がたくさんでてきた。
「空間-時間」という用語も何度も出てきた。
「訳者あとがき」を読んで,そのとおりだったことを知り,合点がいった。
ちょうど今,すこしずつ相対論を勉強していたところなので,
なんかシンクロニシティを感じる。
SFは特にそうだが,まず作者の描き出す世界に馴染むまで時間がかかる。
一つ前に出た「言語都市」は途中でついていけなくなって,挫折した。
「白熱光」では二つのストーリーが交互に語られるので,
やはり馴染むまで時間がかかったが,それでも読みやすく感じたのは
上に書いたように相対性理論を描き出す場面がたくさんあったからだろう。
それだけに物理学の理論に馴染みの薄い人にはこの作品は読みきれないかもしれない。
まあ,「ハードSF」というラベルを見た時点で,そういった人は手に取ることもないだろうが。
で,「おもしろかったか?」
と聞かれると今の時点では「うーん,どうだろう」
としか答えられない。
それほど私はSFに関しては初心者。
再読してようやく何らかの感想が持てそうである。