(続)ハミルトンの四元数

昨日は四元数と物理との関係を書いた。

もちろん数学の対象物としても面白い。

まず積の交換法則が成り立たないので,
ちょっと不便ではあるが,複素数までとは異なるいろいろな性質が成り立つことになる。

で,その中でも面白いと思えるのは行列。

行列の成分を四元数にとったものを考えるのだ。
このときたとえば正方行列の対角化など,
複素数を成分とする場合は(代数学の基本定理が成り立つので)理論構築は簡単ではあるが,
四元数ではそう簡単ではない。

対角化するときには,行列の固有値がほしい。
そのためには行列式から定義される固有方程式を解くことになる。

固有方程式は代数方程式である。
しかしたとえばちょっと計算してみるとおもしろいが,
簡単な方程式
\[
z^2=-1
\]
の四元数解は無数にある(計算してみてほしい)。
これは複素数のときとかなり異なる現象。

では一般の四元数係数の代数方程式は解を持つのだろうか。
実はこれは正しいことが知られている。
私が知っている一般の(四元数係数の)代数方程式に四元数解が存在することの証明には,
代数的位相幾何学に関する結果が使われていた。
その方法は通常の代数学の基本定理の位相幾何学的な証明と同様に,
写像度という概念を使ってなされる。
(複素数の場合のこの証明法は大学の時に勉強していたので,今回は理解しやすかった)
初等的な証明があるかどうかは知らないのだが,
このようにかなり数学の深い結果が用いられている。

行列の固有値を固有方程式の解として求めるというルートをとるので,
こういった基本的な事実が必要となる。

上では当たり前のように書いたが,
実は四元数成分を持つ行列の行列式の定義を与えることも結構デリケートなようだ。

行列についてさえこれほどなので,
まだまだ,いろいろと調べる必要性があるようだ。

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